2007年7月19日木曜日

イギリス変り話

意外と知られていないことにイギリスには二重国籍を持つ人間が多い。二重国籍といってもパスポートを2つ持っていることである。

日本ではこの二重国籍を認めていないので仮に日本人がイギリス国籍を取得したときには日本の国籍を捨てることになる。”国籍”という言葉を使用しているので何か大変なことのような響きがあるかもしれないが、実際には便宜上の市民権取得という点から多くの人がイギリスのパスポートを取得している。イギリスに住んでいながらイギリスのパスポートがないと、外に旅行するごとに通関で質問される。永住ビザをもっていてもそうである。空港でも日本の観光客が並ぶ列の中に並んで全く同じ扱い。イギリスパスポート保有者は別のラインから質問なしでどんどん入国処理される。この煩わしさからイギリスのパスポート(国籍)をとっている人がほとんど。多いのは中東、ロシアなど旅行上さまざまな制限のある国々の人。日本のパスポートは先進国どこでもビザ協定を結んでいて3ヶ月は問題なく滞在できるが、それ以外のパスポート保有者はいまだに旅行ビザ取得が必要であったり面倒なことが多い。そのほかイギリスパスポートがないと市民権が認められず、イギリスに何十年も住んでいてもまったく参政権が認められない。政治は自分の生活に深くかかわってくる。そのときの政権によって税、法などが自分に有利、不利になったりする。それに対して参政権が認められていないというのはなんといってもむなしい。

さてここ最近イギリスとロシアで外交上の小競り合いが続いている。それもこの二重国籍に関係があるのである。今年ロシアの前KGBスパイがロンドンで暗殺された。暗殺に使われたのは放射線物質。聞いただけでも恐ろしい。調査の結果、犯人はロシアのこれもまた前KGBスパイと判明。ロシア人がスパイ同士の殺し合いであれば、外交上はさして問題はなかったかもしれない。ところがこの暗殺されたスパイが二重国籍保有者となると事は別。つまり、イギリス人扱いとなる。これもおかしいところだが、どう考えても彼はイギリス人じゃない。イギリスに在住している期間も短ければ、イギリスとの関連性も薄い。イギリスは過去に結構簡単にイギリス国籍を取得できた。イギリスとの由縁などなしにイギリス国籍の安売りはここにあるように奇怪な状況に発展しえる。最近不法入国者が多く、ビザのシステムなども見直しがなされているが、このイギリス国籍取得のシステムも大きく変わってくるのも時間の問題。

最後に国家安全保障上の問題。イギリスパスポート保有者といいながら、実質イギリス人ではない人たちがイギリスパスポートをもって他国を自由に旅行できる。実質的なアイデンティティーを隠して他国に渡ることが出来る。特にアメリカなどにとっては脅威。テロリストの国々のバックグランドをもった”イギリス人”が多く、最近アメリカではイギリス人への旅行ビザを再開する動きがある。

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