2007年6月28日木曜日

プライバシーの考え方

プライバシーに対しての考え方、認識は各国で大きな違いがある。



イギリスはプライバシーに関しては各自の基本的な権利としての認識があり、それに反する取り扱いには激しい反発がある。なにせ、この国では身分証明書を持ち歩く必要もなく、提示を求められても拒否できる。実際には身分証明書として使えるものがないこともある。政府が911のあとに身分証明書の導入を計画したが、ことごとく反対にあっていまだに導入されていない。これに関しては個人の自由Civil libertyへの考え方の違いが影響している。一方、アメリカはどうかというと、はっきり言ってプライバシーのカケラも感じられない。Social security numberという背番号をつけられ、この番号に各自の本来プライベートな情報がくっついている。銀行で口座を開くにも、時に買い物をするにも聞かれる。アメリカで生活している人も特別意識もなく、Social security numberを聞かれるとそれに対して疑問もなく答えているのであろう。銀行などを利用するときに本人確認としてよく聞かれる。

911後に発効されたテロ関連法もアメリカとイギリスでは対照的である。アメリカはその法律を”Patriot act”という呼び名をつけた。つまり、それに反対することは愛国的ではない、という反感を買う可能性がある。反対しにくいような呼び名の法律を作り、ここで取り上げている個人のプライバシーの侵害を合法的なものとした。イギリスでも同様の法律が出来たが呼び名はその通り”anti-terrorism law"。個人のプライバシー、自由の侵害に関してかなりの論議が重ねられた。結果、アメリカに比べてかなり後になってから発効する。そして、一部時限立法となるなど、かなりの制限が課せられた。

民主主義を掲げる国々も曲がり角に差し掛かっている。これまで当たり前として憲法上保証されていた”自由”も実質的に制限がかかるようになってきている。裁判の基本となる”疑わしきは罰せず”も先にあげた法律制定により、実際に犯罪が行われる前、立証される前に罰せられることになる。テロというのは人の心に住み着くもので、その点難しい面がある。しかし、実際に確率という面から自分がそのテロに巻き込まれる可能性を考えると交通事故にあうより低い。そのために自分がどれだけの自由を犠牲にしているかよく考えてみる必要がある。

2007年6月8日金曜日

海外移住 年金編

まだ働き盛りで海外移住を考えているときは年金も頭に入れておく必要がある。引退した後の年金がどうなるかを現時点で把握しておかないとそのときになってからでは遅い、ということがありえる。

日本は違うがかつての植民地で暮らすイギリス人には大きな年金問題がある。年金受給は海外でも出来ることになっているが、その年金受給額が本人がイギリスを出たときのレベルで凍結されてしまう。つまり、1960年にイギリスを出た人は、その後カナダなどのかつての植民地で年金受給を始まっても1960年レベルの年金しか手に入らないということ。仮に1960年の月当たりの年金支給額が100ポンドとすると2007年の現時点で年金として受け取れるのも100ポンド、ということ。これが同じひとでイギリスにずっと住んでいたとすると毎年のインフレ分だけ2007年まで調整された額、500ポンドなどの年金支給ということになる。これは冗談ではなく本当にある話。ひとつの余談としてあげるが知らなかったでは済まない。

海外に出る前に自分が日本の年金分として払い込んだ分のほか、今度海外で働いた際に払い込む年金分もいつ、どれだけ支給されるのか、その受給資格がどのような形で生まれるのかを確認する必要がある。海外で就職先が決まったからといって大喜びでいっても、思わぬ誤算が生まれることもある。年金というのは現時点でもらっている給与から支払われる。そしてそれが将来的に自分が引退の年代に入ったときに支給されることになるもの。本来、自分の就職先の給与と合わせて現在価値ベースに直し、かつそのときはその国の税制までも勘案した上で計算したいものである。

日本からの資金逃避

資金逃避というのは実際に国境を越えるものと越えないものがある。国境を越えるとその後の資金の動きは日本に戻ってこない限り日本当局のレーダーからは消える。国境を越えないものの典型は外貨預金。外貨預金は日本の銀行内で円になったりドルになったりするがその中からは出ない。

ここ最近日本から国境を越えるタイプの資金逃避が続いていると聞く。典型はオフショアでの銀行口座開設に伴うもの。その銀行口座開設をすることによってその口座を元にクレジットカードが使える、日本でお金が引き出せるなどの便利性を伴い人気が高いものだとおもう。一般の人は国境を越えてオフショアなどで開設した銀行口座の資金総額が1億円を越えない限り、外為法上の申告義務がない。しかし、日本の税法上の申告義務が免れることと勘違いしている人が多い。税法上は日本に住んでいる限り海外どこから発生した所得に関しては報告義務がある。ところが、実際問題いったん外為法上で申告義務のない国境を越えてしまった資金は日本に戻ってこない限りわからないため、たとえばその金利、キャピタルゲインなどを税申告している人は皆無状態。かといって、その資金を使えないかというと先に示したようにクレジットカード、それを元に日本でATM引き出しが出来るので”実質的に”国内に資金を戻しているのだが、その戻ってくるルートが出て行ったときと違うため”見えない”。このようなシステムをLoopholeという。つまり、逃げ口と訳すことがある。Loopholeはいつか閉じられる。それまでこれらオフショアへの資金逃避は続くことになる。

為替屋HPが日本語で書かれているせいか、日本からこれら資金逃避型の円⇒ポンドの問合せが絶たないが、為替屋はイギリス在住の日本人向けのサービスであり、イギリス在住者に利用を限定している。しかし、今後も問合せは続くことだろう。

海外暮らしの手引き 健康編

海外で暮らすことになるとまずは健康面の体制をしっかりしておくことが必要。これは体を鍛えるということではなく、病気になったときへの準備ということ。

たとえば長期で海外に来る前に日本で海外医療保険に入っておく。ただし、持病や2回目の治療(怪我以外)などはそれも持病として保険ではまかなわれない。この点は気をつける必要あり。イギリスを例に取ると基本的に医療はタダであるが、これには穴がある。タダには理由があるということ。重大な病気になろうと待ちリストがあり、癌であろうがなんであろうが自分の順番が来ないと医者に会うことが出来ない。中には途中で死亡する人も多い。かといってプライベート医療というと高額であると同時に、場合によっては1ヶ月近く待つことになる。緊急性があるものは医者が会ってくれるケースもあるが、国民医療が基本的にタダであることから、医者が病院に常駐していない。医療コンサルタントとしてその病院を利用させてもらっているのが実情。したがって、あそのこの病院にいくとこの医者がいるということは必ずしもない。プライベートで有名なロンドン街中のHarley streetというところも、これら医療コンサルタントがオフィスを借りて集まっているだけ。ほとんどが医療施設というのがない。つまりCTスキャンとかがその場所にない。必要時には医者からこれこれの場所に行って検査をして帰ってきてください、といわれる。死にそうなときにはそんな余裕はない。したがって、イギリスに来るには覚悟がいることを言っておく。アメリカはどうかというとすべて一部を抜かしてすべてプライベート。これもかなり高額。保険もそれなりに高い。それを頭に入れたほうがいい。カナダはイギリス型の無料医療であるがこれも待ちリストがある。

2007年6月6日水曜日

夢の海外暮らし

海外暮らし、もしくは長期滞在というのが日本で流行と聞く。不思議ではない。海外旅行が80年代の円高にのって大幅に増え、バブルに乗って日系企業の海外進出も増え、海外の紹介番組なども増え、目に付くものとして煌びやかに映るものである。誰もが一度は暮らしてみたいと思うのも然り。

しかし

実際の生活という点から行くとそれほど簡単ではない。夢の前にReality checkが必要。この夢を抱えるのは若い世代から老年代までと幅広い。老年代とまでは行かないまでも自分のあたりの年代からの視点にたって、それらをチェックすることにする。

言葉 

英語がほとんどと思う。英語圏以外でも英語が共通語ということには変わりない。どれだけこれが必要かということはツーリスト経験だけじゃわからない。英語が出来ないのであれば日本語のサービスが充実している国に行くしかない。先進国の大都市ということになる。自ずと生活コストは高い。ましてそこで生活を始めるにしても全くベースがないことから、銀行口座を開くにもてまどうことになる可能性あり。駐在員のように会社が全部面倒を見てくれるわけではないので、それらは自分でやらなければならない。そのためにも言葉は必須。甘く見てはいけない。

生活

生活といっても日本と違う。家もない。借りるしかない。そのために日本人向けの不動産業者はいるが貸すのは現地の人間。その人が貸すかどうかを判断する基準はあなた自身の信用度。日本のように大企業に勤めていてそれをバックに住宅ローン、クレジットカードなどの申込みをするのとは違って、全くCredit historyのない人が異郷の地で住宅を借りるということは、まずひどいものを高い値段で借りるか、高いものをさらに高い値段でしか貸してもらえない。日本で外人がアパートを借りることを考えるといい。その貸し手が自分だったらどうかということ。次に足の確保。車が先決。イギリスは右通行だがほかは左。足がないとどこへもいけない。買い物だってそうである。国際免許をとってきてそれを使うか、本格的には日本の免許を現地のものへ書き換えて使うかのどちらか。車を買うにもその分大金を持ち歩くわけには行かない。銀行が必要となる。銀行も同じ理由で簡単には開けない。銀行口座開設で聞かれるのは現住所、そこにどれだけ長くすんでいるかなど。つまり、海外にすぐに渡ってきた人にはかなりハードルが高い。

健康管理

つまりは病院。普段は適当な英語を話せる人でも病気のときはまったく困るときがある。つまり英語が違う。医者が話す英語は日本風に病名を聞いたら大体ぴんとくるようなものではない。ラテン語から起因するものがほとんどなので10年以上住んでいても慣れないと何のことやら全くわからない。自分でどこが悪いかを説明するにも普段の英語ではよく伝わらない。このあたりが”ジクジク”痛いとか。英語でなんていっていいのか。しかしそれを正確に伝えないと生死にかかわることさえある。先進国、大都市には日本語の通じる病院があるが、これも落とし穴。緊急時は現地の病院に救急車で運ばれる。風邪だけならいいが、それ以外緊急性があるときは大変。大丈夫だろうと思っていても何か起きてからでは遅い。長期に滞在するとするほどこれらに出くわす確率は高くなる。考えておかなければならないことの1つ。

年金

日本での年金の支払いやら、現地の国での税金のことなど。資産がある人はそれほど複雑なことが多い。長期滞在して(大体半年以上)になると国によっては納税者登録が必要となる。そして国によっては全世界の所得申告を求められる。つまり、日本で所得があろうが、そのほかであろうが申告義務が発生する。義務が発生するということはそれを全うしないと国によっては刑務所行きとなる。

教育

子供がいるときは教育が第一の悩みの種となる。私立にいかせるのであれば頭さえあれば問題ない。ここでいう私立というのは、程度の低い私立ではなく名門私立のこと。それ以外は公立にいくしかない。先進国といえど公立は一般的には教育のレベルが低い。日本の最近低いと聞くが、さらにその倍悪いと思っていたほうがいい。当然、住んでいるところで行く学校が決まる。いいところに住めばいい学校がある。先にあげた理由から、すぐにいいところに住めれば問題ないが、それ以外だと親として結構大変。

考え付いたものを書き記したが、今後も同じような題材で書き足していくことにする。

2007年6月1日金曜日

イギリスの面白いところ

イギリスというのはほかの先進国に比べて面白いことがある。何が面白いかはそれぞれ個人で違うと思うがここで取り上げるのは首相になる人。7月にブレアからブラウンへの首相交代があるが、この2人にも共通点がある。トニーブレアは在任中に子供が生まれた。これは4人目の子。ブラウンも在任中に子供が生まれた。首相としていわゆるよちよち歩きのToddlerがいるというのはほかの先進国のトップにはない。だからと思うが教育には2人とも強い関心を持ち、子供の世話をしなければならない片親、両親に対する政策に関しても革新的な政策を実施に移してきた。一方、トーリー(保守党)の党首(首相となりえる最も近い野党の党首)も小さな子供が3人いる。うち1人は身体障害者。彼の政策もGrowing familyを抱える英国の中心的な労働者にとって助けとなるものを提唱している。当然、野党として現状の政策を批判することはあるとしても最終的な目標は類似している。すべては自分たち自身が日常の実体験を元に自分たちにあった政策を提唱することが国民にとってもプラスであるという点には変わりない。日本のすでに人生終わってしまったような老輩政治家が政策をたてるのとは大きな違いがある。彼らの実体験は遥か昔、今の若者、中心的な労働者たちが何を言ってもそれが伝わりにくい。

もう1つトニーブレアのこと。彼は首相を辞してから改宗するらしい。英国はプロテスタントが主流。彼もプロテスタント。ところが今度はカトリックに改宗するということ。首相であるうちは改宗したかったができなかったらしい。これには北アイルランド問題などが絡んで自分自身が難しい立場にあったからであろう。歴史的なマイルストーンとして今年この北アイルランド問題が決着した。この北アイルランドの問題は知ってのようにイギリスにとってはテロとして影響してきた。私も1991年からロンドンに住んでいるが何度となくテロの現場を目撃し、自分も危うく逃れるような状況に接してきた。世界の紛争が宗教性を増す中、ここ最近多くの若者も宗教心を取り戻しているらしい。大体、世界が不安定になるとその傾向が増す。これは不思議ではない。昔から宗教というのは人間の不安心理を助けるために発展してきたし、逆にそれがなければ宗教ということ自体生まれていないだろう。面白いのは一国の首相が改宗するという点。ほかの先進国トップが改宗するだろうか?まず考えられない。だからこそユニーク。そのユニークさで過去10年以上イギリスのトップとして国を引っ張ってきたのがトニーブレア。彼の指導の元ここ10年イギリスは大きく様変わりした。