2007年8月31日金曜日

アメリカとイギリスの違い 金融危機編

ここ最近市場を騒がしてきたアメリカの住宅ローン問題がきっかけとなった世界中の金融危機。アメリカとイギリスでは対応が”全く”違うので紹介しておきたい。これは文化上の相違、政治のシステムなど根本的な違いがあることを示す。

ポイントは”モラルハザード”といわれるもの。無鉄砲な住宅ローン貸出しを行った金融機関、それを利用して返済能力がないのに住宅を購入した人々、どちらをとってみても常識的には考えられない。ビジネス慣習から言っても考えられない。つまり、自分で勝手に無茶をした人々を救う必要があるかどうかが問題となる。それを救済することを”Bailout”という。救済するのは政府、中央銀行。いずれも国民の税金が元。救ってしまうと何がおきるかというと、将来的にも同じようなことをする人間が出てくることを意味する。救ってもらえることがわかっているのだったら無茶したっていい、という考えを助長する。一方、救わないとどうなるか。学習効果が生まれる。同じ人間は二度と同じ間違いを起こさなくなる。それでは救う、救わない、どちらがいいかというと自ずとわかる。イギリスは昔から確固とした態度を崩したことがない。中央銀行は有名な老舗ベアリング銀行が1人のトレーダーが無茶なトレードをしたことによりつぶれかけた時に一切救済の手を差し伸べなかった。その前にも一切救済の例がない。アメリカはというと1998年に似たような金融危機が起きたとき、そのきっかけとなったLTCMというヘッジファンドを救済した。つまりBailoutした。中央銀行に当たる連銀が直接的に資金を提供したとか、国が救済したということはないが、積極的に債権者に働きかけさらなる資金の注入を促し、Bailoutを影から支えた。この事実から言って実質的には連銀がBailoutしたことになる。

今回の対応を見てもよくわかる。アメリカは大統領まで出てきて住宅ローンの焦げ付きを起こしている人々を救済策を発表。イギリスはというと中央銀行がイギリスの銀行がこのアメリカの住宅ローン関連の負債が元で運転資金不足に陥ったときに”ペナルティー貸出し”を利用できることを明示したのみ。通常の貸出金利より高いペナルティーを払って借りてください、という態度をとる。そのほかは一切なにもおこなっていない。世界のそのほかの国はどうかというと、ドイツは既に問題のある金融機関に資金を注入。ドイツも昔から国が救済の手を差し伸べる傾向がある。

2007年8月10日金曜日

借金天国

ここ最近株式市場などが急落している。意外と知られていないのがその原因。いろいろ取り上げられているが究極的には世界的な”借金天国”が崩れていることによる。

引き金はアメリカの住宅ローン。まったく返済能力のない人間に住宅ローンを貸し付ける。覚えている人は日本のバブルの時期に似ていることがわかる。銀行が競争して不動産ローンを貸し付けた。全くローンのいらない人にまで貸し付けたじきである。結果はどうなるかは常識的に考えてもわかる。その常識的にわかることがおきただけ。実は借金天国はこのアメリカの住宅ローンだけに限らない。例を挙げるとM&Aと呼ばれる企業の買収。これは通常買う側の株式、その資産を利用して行われるのが通常であるが、なにせ借金天国であったことからこれを借金を通じて行っていた。株式市場が下落すると借金にて買い付けた会社の”価値”が急落する。自ずと貸し付けた銀行がその後の貸付を渋る。その他に、有名なアメリカの投資銀行などは従業員に自社の運営するファンドへの参加をインセンティブをもって呼びかけた。そのインセンティブとはただ乗りの借金。100万円分のファンドを更に100万円貸し付けて200万円分買わせた。更に元本保証。多分かなりの従業員がこれに乗ったはず。これも借金天国の時期のみにおきうること。最後の例。世界的な為替の売買ブーム。日本でも外貨預金を通して多くの人がこの為替売買に関係している。一般的な意味での為替売買とは証拠金取引。証拠金取引とは100万円で1億円の取引をすること。つまり9900万円は借金。これも借金天国。みんな円を借りてそのほかの高金利通貨を買っている。しかし、ここで見落としているのはリスク。借金はいつか返済しなければならない。円安が継続的に続いている最中は全くその必要がないが、一時期でも2%程度円高に振れると大変なことになる。何が大変かというと100万円でかりた1億円が9800万円にしかならなくなる。つまり100万円足りなくなってしまう。もともと100万円しかないわけであるから本来であれば1億円など借金するほうが”気が違っている”わけだが、なにせ借金天国、みんなが同じ事をやっているのでついつい手を出してしまったというのが本音であろう。実際に誰も1億円を100万円に対して貸してくれなければそんなことにはもともとなっていないはずである。しばらく続いた円安もここ最近急激な円高に豹変。2週間弱で約6%の円高。昨日からみても7円以上円高(約3%)。借金しているひとたちがみんな売却して返済を強いられている。あまりにも多くの人が同じことを行っていたのでその分だけ円高のスピード、幅は誇張される。

現在起きているのはこの世界的な借金天国の修正。どこまで修正が続くかが問題。既にアメリカの住宅ローン会社はいくつか倒産。ドイツ、フランスなどでも銀行の倒産がうわさされている。