2007年3月21日水曜日

投資対象としての為替 外貨預金

投資の対象となるものは金融資産だけとは限らないが、ここでは金融資産の中での為替を考えてみることにする。外貨預金がこれに当たる。

金融資産として一般的に投資対象となりえるには、一にも二にもに流動性(換金性)。流動性のないものは正当な価格形成が阻害される。為替はその点、流動性に富む。次に考えるのは投資としてどれだけのリターンがあるか。このリターンというのはインカムゲイン、キャピタルゲインの両方を合わせたトータルリターン。簡単に説明すると、インカムゲインは金利収入、キャピタルゲインは元本の値上がり(値下がりも十分ありえる)。これの点においても為替は投資対象となる。つまり、為替自体が投資の対象として十分な素質を備えていることになる。
株式投資と比較してみてはどうであろうか?違いはデフォルトリスク(倒産リスク)。株式の場合は個別の会社の倒産リスクを負うことになる。一方、為替のデフォルトリスクはどうであろうか?その外貨を発行している国が倒産することがデフォルトリスク。実際には為替取引は対外貨であることから、その国の外貨支払能力がこのリスクとなる。とはいえ、国は倒れない。必要であればお金を刷ることができる。それが株式投資との大きな相違点。

株式の方がリスクが高いことがこれで明確になると思う。

それでは次に投資を考える時に指標となるずRisk&Rewardを説明する。リスクが高いほどリターン(Reward)が高くないと、誰も投資対象として見向きもしない。これは当然のことであるが、投資判断をするにあたり意外と忘れている人が多きことも確か。株式に投資するには当然リターンがかなり高くないとリスクとつりあわないことになる。ポンドに関してみるとここ2-3年は株式市場と同じ程度のリターン。特に、トータルリターンで見ると株式市場の1%以下の配当(為替の金利に当たる)に対しポンドは5%近い金利が大きく影響する。ポンド預金への資金の流れはうなずけることになる。リスクが小さくてリターンが同じ程度。普通では考えられないこと。これがずっと続くかというと歴史的に見てもそれはありえないし、リスク調整したリターンとしても考えられない。それが今後の為替投資のポイントとなってくる。

外貨預金を取り上げているがポンドの預金金利は5%半ば。これがポンドの本来のインカムゲイン。日本での外貨預金はこれほどの金利を払っているところがあるだろうか?答えはNo。5%半ばの金利とその差は銀行の懐に入っている。もう1つ、外貨預金を始める、閉じる時に必要な円⇔ポンド時の為替レートが次のハードル。一般的にeach way 2%程度ここでとられる。つまり、1年して4%の金利をもらい、始めた時と同じ為替レートで閉じるとすると、元本が4%減っていることになり、金利ゼロの投資となってしまう。だから、変換するときの為替レートが重要となってくる。日本からオフショアの外貨預金へ資金が逃げ出していることもうなずける。

2007年3月20日火曜日

商品市況と為替レート

商品市況とは穀物、資源などの市場。たとえば、小麦、とうもろこし、原油、金、銅など。

これらのものと為替レートがどんな関係があるのだろう? と思う人がいるかもしれないが、実は密接な関係がある。原油高はすでにご存知だと思う。1990年前半の$10から昨年の高値$80までほぼ一直線の上げ。他の商品市況も同じようなパターン。上げ一方。背景は中国の経済成長から来る需要。これはうなずける理由だと思う。ここで説明するのはこの中国の経済成長ではなく、これら市況の値段の動きと為替レートの関係。

すでに為替レートは米ドル中心に取引されていることを紹介した。世界の基軸通貨として米ドルが使われるということはその通貨を介して世界の商品が取引される。穀物、資源は米ドルで値段が決まり取引される。原油が1バレルあたり$80ドル、といったように。米ドルのレートが上下推移する一方、これら商品市況の価格に関しては”絶対的な価値”というのが存在する。使途がハッキリしているから。ここ最近は実需に基づいたこの商品市況の値段がある一方で、ドルは財政赤字、貿易赤字などから売られる(価格を下げる)。ドルは各国の通貨に対して相対的に下げる一方、商品市況は絶対的な価値、実需から本質的な値段が下がらない。この結果、米ドルで値段が決められる商品市況は値段が上がることになる。

ドルが下げると下げるほど金、銀、銅、原油、とうもろこしなどが上がる。

気が付いた人がいるかもしれないが、米ドル資産を持っている人は(株式、不動産、その他証券など)、ドルの価値の目減りを防ぐ為に金を買っている。理由は簡単。ドルが売られると(ドル資産の価値が下がると)、金の値段が上がるから。ドル資産の値下がりが中和される。

これがヘッジと呼ばれるもの。

2007年3月19日月曜日

為替証拠金取引と外貨預金

最近よく聞く為替証拠金取引。

銀行がこの取引を行うケースも出てきているから。しかし、外貨預金とは大きく違う点を心得ておいてほしい。株式取引を経験した人であれば”信用取引”という言葉の方が馴染みがあると思う。証拠金取引というと言葉ではよく分からないかもしれないが、一言で言うと 為替の投機である。投機とは投資と違い短期の売買益目的の売買。外貨預金もその一面はあるという人がいるかもしれないが、為替証拠金取引の大きな違いは10万円で1000万円の売買をしてしまうこと。外貨預金は10万円だと10万円分しか外貨が買えない。10万円が10%自分に不利に動いても1万円の損失だが、このケースにおいて為替証拠金取引は100万円の損失となる。1万円と100万円。これをとって100倍のレバレッジという。レバレッジとは”テコの原理”のこと。このレバレッジは20-200倍の幅。

2000年前半日本でもこの為替証拠金取引が大活況。一方、リスク開示がほとんど全く無視されていた。1998年外為法改正を逆手に取り、誰でも為替売買と称しこの証拠金取引が始められた。先に述べたように、これは外為法がカバーする範囲の為替取引ではない。やっとこのレバレッジトレードの投機性が明るみに出たころにはかなりの人が大やけどをする。結局、先物と同じ登録をしないと扱えなくなる。しかし、ときすでに遅し。日本の消費者保護の体制不備が明るみにでる。私自身、早いうちから警鈴を鳴らしていた。

2007年3月14日水曜日

為替レート分析方法 テクニカル分析

先に購買力平価で為替レートがどんな位置にあるかを推測する方法を紹介しました。経済学者じゃなくても、ごく普通に一般常識から為替レートを判断することが出来ます。今回紹介するのは、もう1つごく一般人が為替レートを判断する為に使用することが出来るもの、”テクニカル分析”。

テクニカル分析の定義は

過去の値動きを分析することによって、将来の値動きを推測するもの

つまり、為替レートの折れ線グラフのことです。そしてこのグラフをチャートといいます。したがって、ここからはチャートという言葉を使用します。このチャートは過去の為替レートの動きを視覚化したもの。数字として羅列することも出来ますが、それでは視覚的にどのように推移してきたのか判断することが難しく、便宜上チャートにしています。チャートにすることにより過去のデータを数値としてしか使用できない、という枠を飛び出ていろいろなことが可能となります。例えば

上昇基調にあるとき、その基調に沿った上昇のラインを引くことが出来る

下降基調にあるときは、その基調に沿った下降トレンドラインを引くことが出来る

上昇、下降基調が全く認められないときはある一定の幅で動いているとき そのレンジを認識することが出来る

為替マーケットは大きく分けて3つ。上昇、下降、そのどちらでもない。これらの動きの基調をチャートから見出すことができます。

クロス通貨取引とは

主要通貨のドル中心の取引体制(すべてではないが)、対ドル以外の通貨との取引を

クロス取引

と呼ぶ。円を例に取るとポンドとの取引はクロス取引に当たる。何故これをクロス取引というかというと、通常2つの取引を行うことによりポンドと円の取引が可能になるから。説明すると

ポンドを円に対して買う時
対ドルで円売り(円売り米ドル買い) ここでできた米ドルを利用して
対ポンドで米ドル売り(米ドル売りポンド買い)

このように、2つ主要通貨取引を(米ドルを通して”交差”して)行うことにより可能となることからクロス取引(交差)となずけられている。

主要通貨と為替売買の仕組み

主要通貨とは通常ポンド、ユーロ、円、豪ドル、カナダドル、スイスフランをさす。取引量が多いものをさすということになる。あまり為替になじみのない人は”米ドルは?”という質問がでるかもしれない。実は、この主要通貨というのは”対米ドル”で取引される通貨であり、米ドルはすべての主要通貨で取引されていることになる。

円を例にとって見よう。円は円単体では存在しない。他の通貨との相対的価値としてしか存在し得ない。それを取引するのが円の外国為替取引であり、最も取引量が多いのが対米ドルとうことになる。為替の世界では円の対ドル取引を

USD/JPY

という表示であらわす。前半、後半2つの通貨が別々に表示されているが、前半部分が取引通貨、後半部分がその取引によって生じる損益通貨ということになる。今回も円を例にとってみると売買は110円で1万ドル分、ドルを買い付けたとする。その後為替レートが100円になったとき、ドルを売ったとすると

110円 ドル買付け1万ドル 買い付けに使った円 110万円

100円 ドル売却1万ドル 売却で得られた円 100万円 

つまり、110万円が100万になった計算となり、ここでは-10万円と円の損益が生じる。すべての通貨の表示方法は 取引通貨/損益通貨 となるので覚えておくといい。
さて、先に所要通貨は対ドルで取引されているということをはなしたが、これには2方式ある。

1.円のように1ドル買うのに110円という取引方法と

2.ポンドのように1ポンド買うのに1.92米ドルという取引方法

1.2明らかに全く反対の方法。これは歴史的なものが背景となっている。かつてはポンドが世界の基軸通貨、ドルはその後の新興通貨として現在では基軸通貨となっている。ポンド全盛の時代が先にあり、したがって”ポンドを買うにはドルがいくら必要”というポンド主導型の取引方法から始まっているのである。これと同じ方法で取引されるのが豪ドル。これもイギリスの植民地としての発祥から。そしてユーロ。これは誕生間もないが、政治的な意味合いが強い。

余談となるが、ポンド、豪ドル、ユーロの表示方法は、例えばポンドが

GBP/USD

となり、取引通貨がポンド、損益通貨が米ドルとなり、円とは反対になることになる。

為替バブル?

バブルというのはマーケットが本来の価値を無視して一人歩きすること。一人歩きを後押しするのは”投機資金”。先の円キャリートレードであげた短期の値上がり益狙いの借入金をもとにした資金もそれに当たります。株式市場では信用取引といって、10万円のお金で100万円分の株式が買えるなどの仕組みがありますが、それも同じ。バブルの崩壊過程ではこれら投機資金が崩壊を加速します。先に示したブレークイーブンポイントを超えると売らざるを得ないからです。それが”売りが売りを呼ぶ展開”を招きます。

一方、この投機資金が逃げ出したあとに、マーケットの崩壊にさらに加速をかけるのが投資の資金。ここでの投資資金というのは短期値上がり狙いの資金ではなく、長期的な視点から入ってきている資金源。

今回の短期間での円ポンドの急落がバブル崩壊のきっかけとなるかどうかは、この長期的な視点から入ってきている資金源の動きが決め手。それが逃げ出すと1998年から2000年にかけての短い期間に起きた100円近い下落の動きに発展することが考えられるものの、逆に低金利の円を予測して、安くなったポンドを更に買い増しにでてくると、今回の短期的な急落は落ち着きを取り戻します。そして、バブル崩壊の動きには発展しません。

円キャリートレード

2007年2月末から3月にかけた短い期間に見せた突然の241円⇒221円(約10%下落)の動きは、この円キャリートレードの影響によるもの。

それでは円のキャリートレードとは何かを説明します。

円は金利が低いと同時に、簡単に”借りられる”通貨として短期的な値上がり益を狙う投資家のお好みの通貨。ただし、ここでは借入金であることに注目してください。いつか返す必要があります。為替取引という視点から見ると円を借りることは円売り。例えば、ポンドで考えるとポンドを円で売るとポンドが手に入り、円を借金した形になります。借入金利はほぼゼロ。一方、手に入ったポンドは5%以上。日がたつにつれてポンド金利は手に入る一方、借入金利はほとんど支払う必要ありません。この取引をさして 円キャリートレード とよんでいます。円安がずっと続いているとポンド金利のほかにポンドの値上がり益まで手元に入ってきます。それが1998年からのトレンド。

こんな簡単な投資手法があるなんて!

と思うかもしれません。ところが、この借入金をもとにした円キャリートレードは円高に動き出すと手元に入る金利どころか、元本われを簡単に起こします。それがリスクです。そのリスクを承知で短期の値上がり益を狙った為替売買をしているのです。円高になるとある時点で自分の円借入がブレークイーブンポイントに差し掛かります。ブレークイーブンポイントとは損得ゼロのポイント。それを越えると短期の値上がり益が値下がり損となることから、円高が進んでくるとポンド売り、円買い戻し(借入金返済)の動きが加速します。この円高が続けば続くほどその動きが加速します。ある種のパニックとなり、円キャリートレード組がみんな飛び降ります。それが今回の円ポンドの大きな動きの背景。

円ポンドの歴史

円ポンドは上下波乱の経歴があります。ここ10年に話を限定すると

1995年5月 128円 ⇒ 1998年9月 241円 (約3年半の上昇、上昇幅113円)
1998年9月 241円 ⇒ 2000年9月 148円 (約2年の下落、下落幅93円)
2000年9月 148円 ⇒ 2007年1月 241円 (約6年の上昇、上昇幅93円)

約100円の動きを2-6年の周期で繰り返しています。現時点を見ると、ここ10年の高値圏にあることが分かります。イギリスに長く滞在している方は、前回の1998年の為替レートを覚えているかもしれません。それを覚えてなくても、イギリスで日本から輸入された車をよく目にするようになった時期を覚えていると思います。日本からの輸入車はナンバープレートがイギリスの横長に対し、正方形に近いものになるので”目立ちます”。

さて、何故ここで車の話になったかというと理由があります。それは、購買力平価 と呼ばれるもの。日英同じものだったら関税などを別にしたらポンド換算でそれほど値段が変わることはありません。仮に、1時期でも両国にてポンド換算の値段が大きくはなれると、安いところから高いところへのものの動きが発生します。それに伴って、安い通貨が買われ、高い通貨が売られます。1998年に起きたのは、日本の車が関税、輸入にかかる船賃を差し引いてもイギリスの半額の値段になったこと。イギリスから日本に出かけ、日本で車を買いつけ(ポンド売り、円代金支払い)、車をイギリスに持ってくる動きが”加速”しました。これが為替レートが一時期的に大きくバランスが崩れたときに”自然に”起きる経済現象。それにより、為替レートの行き過ぎが修正されます。

為替レートの動きを読むということは至難の業。一方、この購買力平価の尺度を使うと、自分でも現在のポンドのレートが行き過ぎたものか、適正なものかある程度の判断が付くと思います。

日経平均と円

日経平均と円がどんな関係があるのだろう?と不思議に思う人が多いと思います。

しかし、”投資”という視点からみると株式も外貨も同じ投資家からのもの。同じ投資家が1つの投資資産を売り、他の資産に乗り換えたりすると、売られた資産は下がり、買われた資産は上がり、というように自ずと密接な関係があります。これら投資家が外貨を買うときは、例えば円をドルに換えて米株式、米債券、米不動産を買うとき。特に過去10年のうちかなりの期間安値をさまよっていた日経平均が上がってくることは、資産の乗り換えなど資金の新たな動きを喚起します。

具体的に日経平均が上がってくるとどのような効果があるかというと、投資家の株式投資している資産の資産価値が上がります。この効果は”リスクアペタイト”が上がる、というように表現されます。アペタイトというのは”食欲”、つまり今までと違い食欲が出てくるということ。食欲が出てくると自ずと活動が活発となり、かつてと打って変わってりリスクに対して許容度が上がってきます。投資においてもっとリスクを取ろう、という姿勢が出てくると外貨資産への投資が始まります。外貨資産は同じ株式でも為替レートが絡む分だけ一般的にリスクが高い投資とみなされます。

したがって、日経平均の上げは外貨資産への投資という流れを加速。逆に、日経平均が下がってくると外貨資産からの逃避という流れを加速するともいえます。2007年2月から3月のポンド円の動きと日経平均の動きをみると、そのカラクリがよく出ています。日経平均が大きく下げた日は円高が大きく進み、日経平均が多少戻すと円安が進みという関係が浮き出ます。この関係が強いときと、比較的弱いときとありますが、円の行方を見るうえでは1つの指標となります。

2007年3月12日月曜日

夏時間

アメリカは早くも夏時間入りしている。

いつもより1ヶ月程度早い。イギリスは3月末の日曜日と決まっている。アメリカが早めに夏時間を始めた理由は簡単。原油高からくる電力料金高を助ける為。欧米各国で行われているこの夏時間、いまだ日本は導入の気配がない。様々な理由があげられているが、通常行われている夏時間に更に輪をかけている国があるのであれば、十分考慮に値するし、その時期に来ていると思う。

日本では社会的、経済的なバランスをどこで取るかがあまり論議されないで感情的な論理で物事が決定されることが多い。サラリーマンの労働時間が夏時間を導入することで本当に増えるのだろうか?夏時間導入でよく出てくる反対論である。世界各国(米国除く)が二酸化炭素削減を掲げて政治課題の1つとしてエネルギー問題を考えている中、日本も感情論抜きの論理的な根拠から夏時間導入を考えるポイントに来ていると思う。海外に暮らしているとその恩恵がよくわかる。